プレイリストはゴールではない
主要プレイリストへの掲載は依然として大きなマイルストーンに感じられますが、最も成功しているキャンペーンはそれをスタート地点と捉えています。たとえば Fresh Finds R&B にトラックが掲載されると、数千回の再生が得られるかもしれませんが、その勢いが Spotify Radio などのアルゴリズムチャンネルに波及することで、さらに大きなムーブメントが生まれます。最近のあるキャンペーンでは、エディトリアルからわずか 3,500 回のストリームを得たトラックが、その後 Spotify Radio だけで 70,000 回以上の再生を記録しました。
ここに到達するためには、セーブ、リピート再生、ユーザー作成プレイリスト、本物のファンとのつながりのサインを重視する必要があります。プレイリストへの掲載はきっかけに過ぎず、より深いエンゲージメントこそが曲を定着させます。
何を追跡すべきか(そして何を無視するか)を知る
ほとんどのストリーミングダッシュボードにはノイズが多いですが、限られた指標がリスナーがファンに変わっているかどうかの信頼できる洞察を与えてくれます:
- リスナー1人当たりのストリーム数:最初の数日間で1人当たり4〜5回の再生が見られれば、強い反応のサインです。
- ユーザーによるプレイリスト追加:ファンが自分のプレイリストに曲を追加するのは、単なる受動的な露出よりもはるかに意味のあるサインです。
- On Repeat(Spotify for Artists 経由):どのトラックが時間をかけてリスナーの日常になっているかを示します。
「リスナー1人当たりのストリーム数は最も過小評価されている指標の1つです。最初の数日でこの数字が高ければ、本当に何かがつながっているとわかります。」サム・リー
より深いコホート分析やクロスプラットフォームのトレンド追跡には、Music Tomorrow、Chartmetric、Soundcharts などのツールを活用すると、オーディエンスの行動、地域でのトラクション、類似リリースとのパフォーマンス比較を把握するのに役立ちます。
アルゴリズムを追いかけず設計する
ストリーミングアルゴリズムに影響を与える最善の方法は小手先のテクニックではなく、ファンの関心を示す一貫した動きを積み重ねることです。今も効く基本は以下の通りです:
- プロフィールの完成:歌詞、キャンバス、バイオ、アーティストピックを更新し、各プラットフォームにアーティストの全体像を伝えましょう。
- リリース直後のエンゲージメントを重ねる:プレス、エディトリアルピッチ、SNSキャンペーンを最初の48時間に集中させ、初動のアクティビティを増やします。
- アーティストプレイリストの意図的活用:新譜をジャンルが近い他アーティストと並べて配置すると、アルゴリズムやエディターに自分の立ち位置を理解してもらいやすくなります。
「アルゴリズムは魔法ではありません。シグナルを追っているだけです。ファンが現れれば、アルゴリズムも反応します。」サム・リー
エディトリアルは進化したが、今も重要
エディトリアルプレイリストは依然として価値がありますが、それ単独で長期的な成長を促すことは稀です。目的地ではなく“きっかけ”と捉えましょう。理想的なのは、それがラジオやアルゴリズムプレイリスト、ファンの行動などにモメンタムを生み出す引き金になることです。
エディトリアル掲載の確率を上げるには:
- できるだけ早く提出する(特にEPやアルバムの場合)
- ジャンルやサブジャンルのメタデータを正確にタグ付けする
- 500文字のピッチはできるだけ文脈や具体性を持たせる
- リリース計画は、より大きなストーリーと合わせる。なぜ今このリリースが重要なのか明確に説明できていれば、注目される可能性が高まります。
早めに提出し、エディターに時間を与える
エディトリアルサポートを本気で狙うなら、タイミングが鍵です。アルバムやEPの場合、リリースの少なくとも4週間前に納品してください。エディターが音楽をじっくり聴き、文脈を理解し、今後の番組編成にどうハマるかを考える時間が必要です。遅れると、社内での検討すらされないこともあります。
シングルでも早めの納品は有利です。リリースの14日前までに納品すると、ピッチ担当者(Spotify for Artists、Apple Music for Artists、ディストリビューター独自ツール問わず)がきちんと仕事をする余裕が生まれます。メタデータや音源が早めにシステムへ入れば入るほど、審査や配置のチャンスも増えます。
キャンペーンツール:SpotifyのKitを使うタイミングと方法
SpotifyのCampaign Kit:Spotify Marquee、Showcase、Discovery Modeは大きなリーチを生み出せますが、戦略を“補助”するツールであり、戦略そのものの代わりにはなりません。
- Marquee :アルバムリリースや主要コラボなど発表したい特別な瞬間に最適
- Showcase :過去作品のリバイバルや見逃されたリリースのハイライトに
- Discovery Mode :既に反応が出ているトラックに限定して使う
ファンデータが投資を裏付けるときにこそ、これらのツールは最大限の効果を発揮します。オーガニックな勢いがなければ、広告による後押しも浮いてしまいます。
Spotifyの先へ:他DSPが提供するもの
Spotifyは確かに主流ですが、発見が起きる場所は他にもあります。ジャンルや市場、フォーマット次第で他のプラットフォームが予想外の成果をもたらすこともあります。
YouTube MusicおよびShorts
今も世界で最も広く使われている音楽プラットフォームです。Shortsは発見力が高く、TikTokより息の長い成果を出す場合も多いです。クオリティの高いビジュアル、ライブセッション、パフォーマンス、クリエイティブな編集は、ただ流し見している人を、ファンへと変える原動力になります。
YouTubeベストプラクティスを見る
TikTok
TikTokでバイラルになるウィンドウはこれまで以上に短くなっていますが、継続性と独自性はいまも有効です。認知されるトーンを作り、アーティストの個性を大切にし、音楽をネイティブにコンテンツへ組み込むこと。プラットフォームを“戦略の一部”に据え、“寄り道”で終わらせないのがカギです。
Apple Music、Shazam、グローバルラジオ
Shazamは、他のデータで出るよりも先に、どこで地元の人気が出ているかを把握できます。Apple Music for Artists を使えば、Shazamでのすべての反応を一元管理可能。Appleのグローバルラジオ――Apple Music 1と40,000以上のステーション――も多くのチームに活用されていません。アーティストはセットリストプレイリストを作成・カスタマイズし、自身のApple Musicプロフィールに直接公開できるようになりました。ツアー日程とリンクさせることで、これらのプレイリストはShazamアプリやShazam.comのコンサートページ、Spotlight検索、Apple Maps、Apple Musicガイドのイベントページにも表示されます。
Apple Musicの活用術を見る
SoundCloud
SoundCloudはエレクトロニック、実験音楽、インディペンデントアーティストにとって今も不可欠です。メジャーDSPでバズる前にここで火がつくことも多いです。いち早いアップロードでリスナーの反応を試し、フィードバックを得て、正式リリース前に勢いをつくることができます。リポストやコメント、限定シェアなど、コミュニティとの交流でも重要なプラットフォームです。
Audiomack
Audiomackはヒップホップ、アフロビーツ、ドリルで、特にナイジェリア、ガーナ、南アフリカ、米国一部市場で重要です。モバイル中心の体験とダイレクト・トゥ・ファン文化が強く、初期ファンダムがここから生まれることもしばしば。直接アップロードで素早い反応が得られ、Creator Dashboard でリアルタイムのトラクション管理も可能です。ストリートレベルの関与や地方発のムーブメントを重視するキャンペーンにも最適です。
リリース週を超えて続くキャンペーン設計を
2025年には、最も効果的なキャンペーンは3〜6ヶ月にわたり展開されます。これはファンに絶え間なくコンテンツを投げ続けるのではなく、「波」を計画することを意味します。
- バージョン違いやリミックスは、オーディエンスの拡大、新たな市場への進出、新しい側面を伝えるという目的を明確に。
- 他マーケットのアーティストとのコラボは、新市場でのアルゴリズム的なサポートを得られます。
- リリース後のストーリーテリング――ツアーダイアリー、ライブ音源、インタビューなど――で楽曲の寿命を延ばし、ファンとの絆を深めましょう。
先を見据えるチームに向けて
持続的な成長のために、より多くの音楽企業が以下に投資しています:
- ダイレクト・トゥ・ファンツール:メールリスト、グッズ販売、チケッティング連携でファンとの関係を自分たちが所有
- ファンコミュニティスペース:Discord、プライベート配信、招待制イベントでスーパーファンが特別感を得られる場
- コンテンツの“システム化”:アーティストのエネルギーや創作力に沿った現実的なペースで計画
2025年のキャンペーンはトレンドの追いかけ合いではありません。ファンが“見つけて、留まり、シェア”しやすくすることが全てです。
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